2005年03月27日

美しい魂

tamashii.jpg例の「無限カノン」3部作の第2作にして、クライマックス。主人公の父親(っつっても、実質的にはこのカヲルさんが主人公だよな)と、天皇の嫁になる女の「禁断の恋」が描かれる。つまり、皇太子を含む三角関係の話なのだ。スゲー。
ちなみに皇太子は快活で爽やかな、強靭な意志の持主、みたいな描かれ方で、その筋(どの筋だよ)の方にはご不満かもしれません。
カヲルさんは、金持ちの養子でカウンターテノールでヤクザの親戚の関取と大手新聞記者が友達で義理のお姉さんまで含んで超モテモテで義理のお兄さんは当然の如くゴクツブシで義父の会社の総会屋と揉めてアメリカに渡ってホモの歌の師匠に迫られて皇太子のお妃候補になってしまった初恋の人が忘れられなくて帰国して右翼に狙われて最後のデートをして・・・
という話だったような気がするんだけど、当然、皇太子に勝っちゃまずいわけで、カヲルさんは恋に破れるわけですよ。いやまあ、設定だけで充分不敬罪に値する話なんですが、これまでも島田雅彦という作家は一貫して天皇制を巡る物語を書き続けてきたわけで、これだけやっても話題にならないってのは何気にちょっと悲しいよな。
深沢七郎の「風流夢譚」や大江健三郎の「政治少年死す」のように、新潮社に右翼が乗り込んできたなんつー話も聞かないし。まあ時代が違うといってしまえばそれまでで、誰にでも開かれた皇室、つーのか、変な失言までしちゃう皇太子ってのは確かに人間くさい。そういうソフト路線の皇室相手じゃ、サヨクとウヨクの軋轢なんて起きようが無いんだろうな、と。
ま、それはともかく、「美しい魂」は充分に読み応えのある恋愛小説とも言えるので、女性にもオススメ! 装丁もキレイだし、って変にまとめてみた。

ちなみに、3部作の完結篇「エトロフの恋」は見事に駄目な感じだ。だーかーらー、あんたの紀行文はつまんねーんだよ、島田さん。
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2005年02月23日

彗星の住人(無限カノン1)

suisei.jpg正直、島田雅彦の本は10年振りぐらいに読んだのだが、あんまり変わってなくて安心した。
そもそも、「僕は模造人間」かなんかで、「仮面の告白」をパロったように、今回も三島の「豊饒の海」のパロディ入ってます。
「君」と呼ばれる若い娘が行方不明になった父を探すというのが導入なんだが、実はその父の、「禁断の恋」が主題。初恋の相手が皇太子妃となり、決して結ばれることの無い悲恋を描くのが、この「彗星の住人」から続く「無限カノン」3部作なのだ! ということらしい。問題のお父さんの名前はカヲル。さしずめ、モテモテで悩み多き薫中将といったところ。事実、カヲル君、もてまくりだ。
で、この辺が島田雅彦の面目躍如というところなんだろうが、実はカヲルのお祖母さんはあの蝶々夫人だったりするんだな、これが。趣味のオペラをここまで臆面もなく自身の創作に織り込ませるあたり、「模造人間」の魂百まで死なずって感じだ。
一方で、カヲルの父、野田蔵人は、映画監督「O津Y二郎」(この微妙な伏字!)の紹介で国民的映画女優(Y津O二郎と言われると原節子を想定しますわな)と昵懇になるが、実はこの映画女優、米軍統治下のマッカーサー元帥の愛人だった! みたいな裏日本史まで嘘八百を並べ立てられると、改めてフィクションを読む楽しみを思い出させてくれる。
ともあれ、この「皇太子と三角関係」というネタが出版の足枷になって、出版が遅れたようなことが、後書に書いてあったけれど、まあそもそも「サヨク」(ただしナンパな)なんだから、この程度の話題づくりは、さもありなんと思ったりして・・・
何か最近「ライトノベル」を続けて読んでいたので、こういう「ちゃんとした」のを読むと少なからずほっとする。「君と僕」だけでは語れない世界というものを、ちゃんとしたフィクションで語ること、こういう本は今時、案外少ないものだ(エラそう(;´Д`)。
posted by 西中島・南方 at 21:56| Comment(0) | TrackBack(1) | 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月26日

きみとぼくの壊れた世界

kimiboku.jpg最近Seesaaがメンテナンスページのレイアウトをカラフルに仕様変更して以来、どうも動作が重くなって困る。
それはさておき、早速「きみとぼくの壊れた世界」である。しかし、こんなもん電車の中で読めねーよ。
「お兄ちゃんイヤ-----(*゚∀゚*)-----ン!!!! 」みたいな妹萌え描写など、とてもとても・・・。勘弁してくれ。一応、講談社ノベルズなので、ジャンル的にはミステリと思ったら大間違い。萌え系学園恋愛シミュレーションゲーム小説でした。

別にモテそうにないのに、同級生から妹まで、やたらモテまくる主人公キャラ、ふざけた登場人物名(ま、これは今時よくあることか)、最良の行動を選択肢よろしくフラグを立てながら「選択」する主人公の行動様式。「ぼく」を中心とした極小の「世界」はかくも平々凡々と、黄金色の卵焼きの如く美しく閉じられて、緩やかに過ごされていくのか。
多分ミステリファンからしたら噴飯ものの「トリック」はさておき、一応の探偵役、病院坂黒猫(この名前だけは秀逸だね)が披瀝する数々の長広舌は、時として鋭い舌鋒となって気持ち良かったりする。特に「古典」と呼ばれる小説を称して「初代ファミコンゲームを今更やる気がしないのと同じ理由で、読む気がしない」というのには笑った。
しかし、物語の要諦は、人間関係の網の目で構成される「世界」が常に余所余所しく感じられるナイーヴな登場人物たちが、自分の「世界」の綻びを取り繕おうと他者への暴力的な干渉の手を、こわごわと、おずおずと差し伸べようとするアティテュードにこそあるのだろう。「エヴァ」におけるATフィールドのごとき、主人公の理知の(心の)壁。その透明な膜の向こうにいる3人の女。妹、同級生、売春婦。物語の結末で3人それぞれと、それぞれに「特別な」関係を先延ばしに、微熱的に続けていこうとする様は決して気持ちの良いものではない。まるでセイラから「逆襲のシャア」に出てきた(名前も忘れてしまったような)愛人キャラを取っかえ引っかえしていたキャスバル兄さんのように、都合よく手前勝手に女と関係性を取り結ぼうとする、まさに「ときメモ」(やったこと無えけど)のプレイヤーキャラの如き醜悪さだが、それが作者の意図的な狡賢ささえ感じられるトリックであろうことは想像に難くない。
何にせよ、登場人物たちに、フィクションが「真実」を生むことを執拗に語らせるこの西尾維新という人はある程度、信頼に足る作家であることが判明しただけで収穫としたいと思う。このまま推理小説の自己言及の迷宮に彷徨えば法月綸太郎のように書けなくなるということになりかねないが、そんなヤワなタマじゃない感じだ。舞城のようにフィクションの強度といっていい筆圧があるわけでも、例えば伊坂幸太郎のような社会性とプロットの妙があるわけでもないので、個人的には次回作に期待、という程ではないものの、記憶に残る本だったことは事実だ、けど、一言で言ってオタク向けなんだよな、なんてね。( ´-)y-~~

ちなみに、本作の主人公のような人間は、小説やゲームと違って現実世界では絶対に女にモテない、と思う。
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2005年01月24日

アキハバラ@DEEP

deep.jpgこないだ人がカラオケで黒夢を歌っていて、何となくIWGPづいていたところへ、別な人がこの本をちらつかせてくれたので即借り。ま、ワイドショーとかでしたり顔にコメントしている作者を見てそれなりに馬鹿にしていたので、文章が案外ちゃんとしてたのには感心した。
既に4年前の話なので、古臭いというかデジタル関連の記述にキャッチアップ出来ていない表現が散見されるものの、結構頑張って取材している感じ。いやでもね、主人公たちが開発したAI型検索エンジン(一見ありそうで、何気にトンデモ設定)を盗んだ、あからさまにソフトバンクを戯画化した会社が、その検索エンジンを自社開発環境で改造するんですが、そこは「完全なスタンドアローン環境」なんだそうです。でもさ、検索エンジンを開発するのに外部ネットワークっつーかWWWに接続されてないって設定はいかがなものかと。いや、もしかして、それってIT開発現場では当然のことなんでつか?(;´Д`)
この本もワカモノ向けってことで、極力難しい熟語は避けて、ルビ多目な上に変に漢字が開いてあるので、読了達成感はあっても為にはならない本の典型。いやだから、同じメッセージを発信し、これよりよっぽど面白いストーリーなら、映画でもアニメでも他にあるでしょ、ってことだな。何もこの小説で語られなくても全然構わない感じ。
大体AIが心を持ってどうこうなんて使い古されたネタに、どこまでも類型的なオタク描写( ゚д゚)アキタヨ・・・ これはオヤジ系週刊誌の連載か? つかAI型検索エンジンのGUIがイルカってのがあれですか、Office製品にもれなくついてくる、あの鬱陶しいヘルプイルカ君から連想してません m9(・∀・)ビシッ!!  本当にそれでいいのか? 天下の「ワカモノ通」として。 なんて思いつつ、結構楽しく読了してしまったのでした。この本を持主に返すときは、「借りてよかった」とだけ言う事にしよう・・・。
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2005年01月22日

ファウスト

pe.jpg韓国という国をペに代表させる商店主のセンスが素敵だ。でも、ここにペの写真を貼っただけで、微妙に販促効果が見込まれそうで、それはそれで我が国の知的レベルを憂慮せざるを得ない事実でもある。
で、先日、電話でいきなり「きみとぼくの壊れた世界がいいよ」って何の話ですかって聞き返したら「西尾維新だよ」とか挨拶の前に本を勧めてくるのはいかがなものかと、つかそれならコメント書き込んでくれても良かったんじゃないんですか!>セムパイ!
というわけで、早速、買って来ました。西尾維新著「きみとぼくの壊れた世界」。良く見ると西尾維新の本って、本によってイラストレーターが違うんですな。読んだら感想なぞ投稿しますよ。
のりりんの「生首に聞いてみろ」、ロリ小説で芥川賞取っちゃった阿部和重「シンセミア」あたりも欲しかったんだが、高くて買えなかったズラ(ノД`)シクシク
そういや、最近の本はフィギュア付きとか、総袋とじとかカラー口絵が付いてたり、トレぺとか表紙に型押しとか、いやに変な装丁が多くてびっくりする。デザイナーつけて、そんなに原価を掛けて、でも本が売れないってんだからご愁傷様としか言いようがないよな。出版業界。
ところで、例のオタク本屋のベストセラーランキング第2位にYoshiの「もっと、生きたい・・・」が並んでいたので立ち読んでみた。15分くらいで読めるかと思ったんだけど、案外読むのメンドクサイのね。AIがネットワークの中で成長して、肉体を欲しがるっつーハナシを携帯ホラー風にまとめたみたい(最初と最後を読んだ推定)だけど、マーケティング重視の徹底的なパクリで、サンプリングと言えば優秀だろうし、小学生レベルまで落とした低脳文体が(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ。
ずっと以前に「ブギーポップ」を読んだ時も思ったんだけど、この辺の本は小学校、遅くとも中学校くらいで卒業して欲しいものだ。Yoshi読むならマンガ読んだ方がよっぽど為になるよ。あ、そーいや「Deep Love」はマンガになってたっけ。
それはともかく、西尾維新が置いてあるコーナーで「ファウスト」なる雑誌を発見。中学生が読むような(別に馬鹿にしているわけじゃない)ライトノベルとエンターテインメント小説の中間くらいの、キャラ萌え超能力学園離人症ミステリーみたいのを書いている人たちがいっぱい載ってるじゃありませんか。乙一、舞城、この二人は悪くない、つか舞城は(・∀・)イイ!! で、その辺と同じように佐藤友哉とか浦賀和宏なんか「天才」みたいに書かれてたりすんだけど、ホントかよ。それぞれ2,3冊は読んだのに、ストーリーから文体まで、何にも記憶に残っていない俺は、単に読み方が悪いのか? とか思いましたよ。いやマジ真剣に。他にも、渡辺浩弐とか上遠野浩平、東浩紀、清涼院流水・・・なるほど、そういうことか。きっとこういう本を高校生くらいの少年少女が貪る様に読んどるわけですな。そして、こんなものがこんなパッケージで商売になるってのは、現代が嗜好の多様性を極限まで推し進めた、まさに一億総オタク時代といって差し支えない雰囲気に満ち満ちている証なんじゃないかい?
posted by 西中島・南方 at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月16日

クビキリサイクル

kubikiri.jpg家の近所の本屋は割りとオタクライク(∴◎∀◎∴)な店員が大分権力を持っているのか、コミック売場とかが妙に気合が入っている。「鋼の錬金術師」が最前面に出ているのはともかく、何か聞いた事のないメイドマンガとかが堂々と平積みになっていて、しかも立ち読みできない代わりに、コピーされた数ページ分の見本が付いていたりする。小売店の営業努力なので、版権がどうこうとかは言われないと思うが、何かあれだ、ちょっと入れ込み過ぎ?
さて、そんなオタク書店ならずとも平積み率の高い作家に西尾維新という人がいるのには、ちょっと前から気付いていたものの(もちろんオタク書店ではコーナー展開している)、韓国ゲームみたいなイラストが踊る表紙なだけに、レジへ持っていくのは相当恥ずかしいなと敬遠していた。しかし、これ程までに平積まれ、挙句は「ユリイカ」まで特集するに至って、「ま、1冊なら」と読んでみた。清涼院流水とか佐藤友哉とか、失敗は多々あるが、読まず嫌いは良くない。
「電車男」がベストセラーになるなど、一億総オタク化な日本にあって、「クビキリサイクル」もやっぱりオタクバナシだった。コミュニケーション不全の登場人物、アイロニカルな心象風景、パソコン、メイド(!)。一応ミステリなので、人が死んだりトリックがあったりということなのだが、それは味付けに過ぎない。赤面必死の会話や、アニキャラ風の扉画など、ニートでオタクな脳内妄想としてはなかなか面白かった。( ´-)y-~~
しかし、主人公の友人でたるるーとみたいなサヴァン症候群の娘は、よーく考えるとあんまり存在意義なくね? シリーズ化されてるみたいなので、今後も活躍してくれるとは思うけど、最後に出てきた名探偵さんの方が相当キャラ立ちしてたな。というように、一種のキャラクターノベルでもあるので、そういうのがお好きな方はどうぞ。俺的には2冊目も読んでみようかなーレベル。まあまあ。
posted by 西中島・南方 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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